くわしい人(笑)は知ってるスパコンベンチマーク

人が気持ちよくFF14やって寝ようとしたらクッソむかつくnoteを目撃したので記事を書く。
基本的にムカついた時しかなんか書いてねえな…

https://note.mu/rings

なんかこのユーザーがPEZYの技術的価値を多角的に(笑)検証するみたいな感じにやってるんだけど、基本的に悪意しかなくて草しか生えない今日この頃。

とりあえずこの記事

「くわしい人は知っている.Top500, Green500 の順位はもうスパコン性能の参考にならない」
https://note.mu/rings/n/ne8b5a691940c

は、まぁ、なんというか、そうだね(笑)みたいな感じがある。

実際問題として、「ドンガラ先生が主張しているからTop500には意味がない!」というのは、まぁ、ハナクソでも投げつけてやればいいような意見だと思う。
ドンガラ先生本人がHPCAsiaで、「HPCGの普及をライフワークにする」というような趣旨の発言をしていたわけだけども、だからといってTop500の価値がなくなるかと言えばそんなことはないわけである。
Top500は、「システムが最低限まともに動作しているか?」という指標として十分に機能している。
どういうことかというと

  • 作ったプロセッサで密行列積が実効効率n%出る
  • 作ったシステムで密行列積が実行効率m%出る
  • 作ったシステムが一定負荷(これはmの値に依存する)の状態で一定時間動作する

これは「HPLさえちゃんと動かないスパコンスパコンとしても動かない」という意味であって、スパコンにおいてHPLが走ることは、つまりスタートラインに立ったことと同じことなわけである。

…と、ここまで書いて、「よく考えたらこれロボ太先生が同じこと書いてたわ」ということに気づいたので、
https://gist.github.com/kaityo256/ee7c29859591823d025fce18ccf461ef

を貼って、HPLの有用性だの実用性(笑)については終わりとする。
とりあえずringsとかいうやつはロボ太先生のそれぐらいは読んだんだよね?
詳しい人(笑)は知っている(笑)とかにタイトル変えた方がいいんじゃない?

というか、Top500の性能指標はHPCGでは測れないし、Graphdでも測ることができない。
HPCGとGraphとはなんなのか、といえば、それぞれソフトウェアの特性が異なるベンチマークだ、と答える。
HPCGは何をしているかといえば、端的に言ってしまえばコアな部分は疎行列ベクトル積だ。特性として、メモリのリードでで律速する。
Graph500は何をしているかというと、端的にいうと幅優先探索。これは特性的にネットワークで律速するような挙動を示す。

つまるところ、この三つ、一つだけ取り出して云々いってもあんまり意味がない。
わかってるというのなら、この事実をこそわかっている。

んで、Greenはというと、ちょっと意味合いが異なる。
そもそもGreenが取り上げられているのは、エクサスケールのスパコンの問題はなに?という問題提起からスタートしている。
今までのように規模を大きくして行けばなんとかなるもんなのか? というと、それはノーだ。エクサスケールのスーパーコンピュータは供給電力がそもそも問題になりうるだろう、というのが今の所のTop勢の見解だ。
おそらく20〜30MWぐらいのところで、1ExaFlopsを達成する必要がある。とすると、逆算すれば20MWであれば50GFlops/W, 30であれば33GFlops/Wを達成せねばならない。

というのが前提にあるので、Greenの値に関しては、純粋にこれが大きくなることは、エクサスケールへとまっすぐに近づいていると言える値だ。
いやまぁ、前提となる1ExaFlopsというのは、HPLの計測数値なので、これに意味がないじゃんと言い始めると身も蓋もないのだが。

さて、これらを踏まえてringsとやらのノートを見ると、香ばしい一文がある。

PEZY Computing のスパコン性能を評価するときには,Top500, Green500 の順位は議論の対象から外し,スパコンの技術そのものを評価することが,より良い技術理解につながるのではないでしょうか.

スパコン技術そのものってなによ…みたいな謎フレーズを容赦無く突っ込んでくるあたり、雰囲気でフレーバーテキスト書いてるなろう小説感があって大変香ばしいが……
議論から外すのは大いに結構として、17GFlops/Wという数字(下手にこれ書くと怒られるのだが、これは極限までGreenに特化させた値ではない。なんかそれなりに頑張ったら出たやつ) を無視して「スパコンの技術そのもの」の議論とは、では一体何を論ずるというのか、「スパコンの技術」というのを提示してもらいたいところである。
いやだって、アーキテクチャの話するとなると、消費電力下げるのにかなり頑張ってるしねえ…

あとこの人の全部精査したわけじゃないんだけど、ネコ小脳の話で、「こっちの論文だと規模も速度も上だからネコ小脳の論文に価値なし!」みたいなこと言ってるんだけど、どうみても本文見てると比較対象とされてるやつがネコ大脳のシミュレーションで、なんで大脳と小脳比較してんだろ…みたいな謎が募るんだけど、大丈夫かこれ…

さらにいうのなら、PEZY-SCがスパコンに適切かどうか、というのをkuukaiの事例を取り上げて

このことから,Yahoo! JAPAN は「PEZY Computing のプロセッサはスパコンに不適切だ」と判断したことがわかります.

とか言っているワケだが、まるでYahooさんに聞いてきたかのような口ぶりだなコイツ…

というか、Kuukai導入当時はまだPEZY-SC2はローンチしてなかったので、あの時点ではP100が唯一の選択肢ではあった。まさかあの当時ではすでに2世代前のプロセスのSCを売りつけるわけにも行かないし…
そもそもとして、スパコンに不適切かどうか、というのは、採用されなかったということ一つを取って結論付けられるものではない。自分たちが持ってるワークロードと照らし合わせて、じゃあ全部アーキ入れ替えても問題ないか、というのを検討した上で、これを選ぼうと決定するものであって、その意思決定プロセスなんて、民間企業であれば当然明らかにされるワケないし、所詮は外野の妄想である。それを以ってここまで断定口調で書けるということは、なんというか、イスラエルハイテク某みがあって大変よろしい。

と、色々ツッコミどころ満載すぎるのだが、イスラエルハイテク某とは違い、ぱっと見で普通の文章だから正しいことが書いてあるように見えるが、技術的に明らかな誤りに立脚してPEZYを叩いているので、この存在は週刊新潮やらイスラエルハイテクベンチャーCEOこと大崎勝彦と大して変わらない。
一見あってるように見えるそれっぽい技術ブログというのは最も害悪だと思う。